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日本吃音・流暢性障害学会

理事長挨拶

日本吃音・流暢性障害学会が、2013年にやっと誕生しました。まだ一年経っていない学会です。会員の皆様はじめ吃音や流暢性障害に関心をお持ちの皆様とともに、吃音・流暢性障害の理解を深めることと当事者のQOLを向上させることを究極の目的として、生まれたばかりの本学会をもり立てていきたいと考えています。

学会が誕生するまでには、10年以上の時間がかかりました。長い間、言語障害の研究・臨床・当事者やその家族と拘わってきましたが、言語障害に関連する学会や研究会は多いにも拘わらず、吃音や流暢性障害に関する演題や討議は、何故か片隅に追いやられているような印象を持っていました。そのような時期に、2000年8月にデンマークで開催された第3回 流暢性障害世界大会に参加する機会を得ました。国際流暢性学会が主催する3年に一度の大会です。流暢性およびその障害(吃音やクラタリングなど)に的をしぼった研究や臨床については勿論、当事者の主張なども交えた討議が5日間に渉り、研究者・臨床家・吃音の当事者が一堂に会し、多角的な討議がなされていました。このような研究会はとても新鮮でしたし、正直のところ非常に羨ましかったという記憶があります。

その後、同じ思いを持つ仲間達と相談しながら、2003年から『吃音を語る会』を開催してきました。この会では、吃音の研究や臨床に関心を持っている医師・言語聴覚士・教育関係者・福祉関係者そして言友会(当事者のセルフヘルプグループ)の会員など、様々な分野の人々が対等の立場で研究や臨床に関連した話題を、あまり時間制限を設けず討議をしてきました。当初は2泊3日その後1泊2日の宿泊研究会でした。研究成果の発表は当然のことですが、仮説の段階にあることを発表し、参加者の反論や意見や想いなども含めて語りあいました。出席者にとっては、有意義で楽しい集まりでした。『吃音を語る会』は、吃音・流暢性障害を中心に語り合うことが出来るという一種の実験であったと考えられます。10年経過した時点で、「学会」という組織にしてより広い立場から吃音・流暢性障害の問題と取り組んでいこうという決定がなされました。

本学会の特徴は、当事者も学会の一翼を担うということと『吃音を語る会』の良さを踏襲していこうということです。困難なことが起きるかも知れません。吃音の有症率は1%弱といわれています。決して少ない人数ではありません。ところが、幼児・学童・成人のいずれも、安心して相談に行ける場があまりないのです。昨年、吃音がありながらも、自分の夢を求めて看護師になった男性が、職場の理解が得られないまま自死したというニュースがありました。誰が悪いというつもりはありません。しかし、このようなことが二度と起こらない国であって欲しいと心の底から願います。吃音・流暢性障害のある人々が少しでも安心出来るような状況を作り出すべく、少しずつ前進して行きたいと思います。

長澤泰子

長澤 泰子

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